総務常任委員会視察の2日目は、東京都千代田区で、生成AIの活用について学びました。

生成AIとはテキスト、音声、静止画、動画などのオリジナルコンテンツを自動的に生成するAIで、プログラム、アート作品、楽曲、アニメーションなど様々なものを生成できます。
生成AIで最も有名なものの一つがChatGPTで、ChatGPTはテキスト生成に長けた生成AIツールの一種です。
質疑応答や文章作成、翻訳など幅広い用途で活用できます。
生成AIにはChatGPT以外にも画像の生成や動画の生成に特化したものなど、様々なものがあります。
今日、多くの自治体が少子高齢化による人口減少で税収が減少していく中で、予算は削減しつつも既存の必要なサービスは維持しなければならないという問題に直面しており、業務改革は必要不可欠です。
そんな中、実際にAIを導入、活用している自治体も急速に増えています。
一方で、「導入後の効果が不明」や「何から取り組めば良いか分からない」などAIに関する知識不足により導入が遅れていることが課題として挙げられています。
千代田区では、令和3年にIT推進課デジタル戦略係を発足以降、令和4年に「千代田区DX戦略」の策定、令和5年にDX担当副区長の就任、令和7年に「千代田区DX戦略」の改定と、着実かつ積極的にDX化を進めてこられました。
ちなみに、改定されたDX戦略では、
・手続き等の利便性向上
・地域のスマート化の推進
・職員の生産性向上
・誰もがデジタルを活用できる環境整備
・安全性を確保した上でのDXの推進が重点方針とされています。
生成AI活用の経緯や事業概要としては、令和5年8月から3か月、生成AI(ChatGPT)の活用検証を実施し、令和6年3月に利用ルールや効果的な活用方法等をまとめた「活用ガイドライン」を策定されました。令和6年4月からは全職員がTeams上で、ChatGPT3.5と4.0を利用できる環境を構築されました。
ただ、使いやすい環境整備、効果的なマインドセット(生成AIの業務への活用が当たり前な文化の醸成)、職員同士のつながり(口コミ)、効果的な使い方の横展開(職種を限定しない活用事例)などの課題がありました。
そこで、それらの課題解決に向けて、令和6年8月からMicrosoft 365 Copilotを試行導入されました。
今年度中には全職員が利用できる環境を整える予定で、将来的には、活用する生成AIをCopilotに集約していくそうです。
Microsoft 365 Copilotのメリットとしては、(ライセンスの購入のみで)導入がすぐにできること、ダッシュボードで利用状況が把握できること、既に業務でMicrosoft 365は使用していたことなどを挙げられました。
職員アンケートからは、アクティブユーザー率が97%、今後も使い続けたいが99%とかなりの好評価で、処理スピード(時短)や無限のアイデア出し(創造性)、心理的安全性についてメリットを感じている職員が多いことが分かりました。
実際に職員一人当たり平均2時間/月の業務時間の削減効果があったとのこと。
今後の対策としては、「ただ使う」、「とにかく使う」から「効果的に使う」への発展を促進するため、以下の取り組みを進めていくとのこと。
@職員へのフォロー体制強化
職員個人のスキルアップ、口コミによる利用促進
A生成AIの安全に利用しやすい環境整備
情報の保管についてルール化
セキュリティ対策
B生成AI活用に向けたマインドセット
組織としての生成AI活用の推進
また、千代田区ではMicrosoft社のAzure OpenAI Serviceと連携したAIチャットボットサービス『OfficeBot』も導入されています。
OfficeBotは組織内の業務に関する問い合わせに対して、過去資料や問い合わせ内容をChatGPTが参照して分かりやすく返答することができるサービスです。
行政は業務内容の幅が広いことやそれぞれに専門性が求められることから職員の間で問い合わせが多発していることが課題でした。
そのため、業務内容に関する情報やナレッジを効率よく共有することで、何度も同じ内容を説明したり、業務内容に詳しい職員を探す手間が無くなり職員の業務過多の軽減が期待できると共に、職員の業務負担が減ることで市民サービスに時間を使うことができるようになり、職員にとっても市民にとってもメリットがあると言えます。

自治体が生成AIを導入することは、職員にとっては業務効率化による業務負担の軽減、市民にとっては市民サービスの利便性向上というメリットがあることが分かりました。
一方で、情報漏洩・権利侵害のリスク、導入費用や運用費用といったコストの課題、ハルシネーション(AIが事実に基づかない情報を生成すること)のリスクなど、課題があることも十分に理解し、対処法を検討したり、対策を講じた上で、導入、活用していくことが重要であることを改めて認識しました。